33. 雪国の通学路

 生まれたんは、滋賀県の山の中。昔のことやから、何もないとこやった。店なんか一つもない。だから食べるものはぜーんぶ自分で作るの。作るしかないの。米や野菜はもちろん、味噌も豆腐も、たまには醤油もなあ、それぞれの家で作ったんやで。その家ごとに味が違ったなあ。おやつといえば干し柿くらいやった。

 冬になると雪が深くてなあ。晴れてる日なら30分で学校まで行けるのに1時間かかるの。雪はもうほんまに、ひどいところは1メートル近く積もったかな。そこを歩くしかないやろ。

 頭には綿入れをかぶって。体には「マント」いうて、膝下までの長いのを着る。それで足は藁で編んでもらった長靴をはくんやな。ゴム靴やとすり減って滑るけど、藁はええで。滑らへん。けどな、雪って、溶けてきたらぐじゅぐじゅになるやろ。藁やから、水が染みてなあ。冷たかった。

 学校へは兄弟と行くんやけど、私は下の方でな。お兄ちゃんに手を引いてもろて歩いた。そんなに優しくしてもらった覚えはないけどな。いっつも「ほら、はよ歩け」って怒られてばっかりやった。でも雪の深いときにはな、あんまり進まんもんやから、お兄ちゃんがおぶってくれたなあ。せやないと遅刻するからな。・・・うん、いいお兄ちゃんやったと思うよ。普段はケンカばーっかりしとったけどな。

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